加齢に伴うコラーゲンの減少と皮膚の厚さに関する真面目な話

■私たちの身体とコラーゲン

私たちの体の約60%は水分で、約20%はタンパク質で構成されています。そして、タンパク質の約30%がコラーゲンであり、そのコラーゲンの約40%は皮膚に存在します。そのため、コラーゲンと皮膚の厚さには直接的な関係があります。

皮膚のコラーゲンは年齢と共に減少します。また、一般的に、コラーゲンの量は男性に比べて女性の方が少ないと言われています。

■“加齢に伴いコラーゲンは減少する”の根拠となった臨床研究

化粧品会社を始めとする多くの媒体が、“加齢に伴うコラーゲンが減少する”と説明しています。それを証明した有名な論文があるので紹介します。

1975年にSAM SHUSTERらにより、“The influence of age and sex on skin thickness, skin collage and density”という題目で、British Journal of Dermatology(impact factor : 7.00)に掲載されました。

この臨床研究は、実際に生きている健康な人間の皮膚を手術で採取して分析しており、倫理的に厳しくなった現在では、かなりハードルの高い臨床研究と言えます。


①研究の方法:前腕伸側の健康な皮膚を採取

◆コラーゲンに関して
15〜93歳の、74人の白人男性と80人の白人女性を対象に行われました。大部分は、健康な前腕(伸側)の皮膚の組織の一部(直径5mm)を切り取り、評価していますが、一部、死体の組織も使用しています。それらの組織を、アセトンによる脱脂肪などの特殊な処理を加えて、コラーゲンのみの“乾燥重量”を評価できる形にしています。1961年にWoessnerが報告した方法です。

◆皮膚の厚さに関して
12〜93歳の、90人の白人男性と107人の白人女性を対象にして、測定しています。

◆皮膚のコラーゲンの密度に関して
上述した、コラーゲンと皮膚の厚さを両方測定した、27人の白人男性と、26人の白人女性を対象にして、算出して評価しています。


②研究の結果

◆コラーゲンに関して
コラーゲンの量は、皮膚1mm2あたりの乾燥重量(μg)で評価しています。加齢に伴う近似値は、男女ともに、ほぼ直線的な減少を示しています(図1)。

※Sam Shuster et al, British Journal of Dermatology(1975)93から引用

男性の場合は、20歳から40歳にかけて約20%減少し、40歳から60歳にかけて約25%減少しています。結果的に、80歳の頃には、20歳の頃の約40%しかコラーゲンがない状態になります。

女性の場合は、20歳から40歳にかけて約21%減少し、40歳から60歳にかけて約25%減少しています。結果的に、80歳の頃には、20歳の頃の約26%しかコラーゲンがない状態になります。

また、全ての年齢において、男性の方が女性よりも皮膚のコラーゲンの量が多かったですが、加齢に伴う減少の傾向は同じでした。

また、後述しますが、コラーゲンの密度も男性の方が女性よりも高い値でした。これらは、男性ホルモンであるアンドロゲンが関与していると考えられています。実際、原発性皮膚男性化症(Primary cutaneous virilism)の女性患者は皮膚のコラーゲンの量も密度も高いからです。

◆皮膚の厚さに関して
皮膚の厚さと加齢性変化に関して、図2に示します。

男性の場合、全ての年齢において、加齢に伴い薄くなっていきました(有意差あり、P<0.001)。一方で、女性は50歳代までは横ばいで、その後、減少を認めました(有意差あり、P<0.001)。

※Sam Shuster et al, British Journal of Dermatology(1975)93から引用

◆コラーゲンの量と皮膚の厚さの関係
コラーゲンの量と皮膚の厚さには関係を図3に示します。

男性の場合、皮膚の厚さとコラーゲンの量は正の相関関係を持っています(有意差あり、P<0.001)。

一方で、女性の場合は、60歳以降で、男性と似た傾向を認めますが、60歳以下では、そのような傾向は認めませんでした。

※Sam Shuster et al, British Journal of Dermatology(1975)93から引用

◆コラーゲンの密度に関して
コラーゲンの密度は男女ともに加齢と共に直線的に減少しています(有意差あり、P<0.001)。また、全ての年齢において、男性の方が女性よりもコラーゲンの密度は高かったです(図4)。

※Sam Shuster et al, British Journal of Dermatology(1975)93から引用

■まとめ

  • 前腕の皮膚の場合、皮膚のコラーゲンの量は成人以降、毎年約1%ずつ減少していく。
  • 全ての年齢において、コラーゲンの量は女性の方が少なく、減少率も高い。その原因はアンドロゲンの分泌量が関係していると考えられている。
  • コラーゲンの量が皮膚の厚さと密接に関係している(若い女性を除く)。
  • 今回の研究の対象は前腕の皮膚が対象であったが、著者らは全身の露出部の皮膚(顔面や首など)でも同じ研究結果が得られたと報告している。
  • コラーゲンの減少量が、皮膚の厚さの減少量よりも早いので、結果的にコラーゲン密度は年齢と共に低下している。

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