男性の美容を真面目に考える⑩
〜皮膚の弾力に関する男女差〜

■皮膚の弾力に働く主な成分

皮膚の弾力に影響する主な要素は、①コラーゲン、②エラスチン、③基質(ヒアルロン酸)です。

コラーゲンは支持組織として、エラスチンは弾力成分として、基質(ヒアルロン酸)は保湿成分として働いています。

詳しくは下記のブログをご参照下さい。

■皮膚の弾力の測定方法の種類

これまで皮膚の力学的特性(弾力や粘性など)を定量的に評価するために、様々な測定器の考案が試みられてきました。例えば、下記のような方法が挙げられます。

  • 皮膚を吸引する(図1.2)。
  • 皮膚を一定時間、圧迫する。
  • 皮膚に回転運動を与える(図3)
  • 皮膚に低周波の振動を与える。
  • 皮膚に物を落下させてその跳ね返りを測定する。

■皮膚の弾力の測定方法の原理

一般的にも、専門的にも広く用いられている測定器の一つに、キュートメーター測定があります。これは、口径2mm程度のプローブを皮膚表面に接触させ、一定時間陰圧を加えたのちに解除し、プローブ開口部内へ吸引されている皮膚の高さの時間変化を測定する方法です(図1)。

測定結果のパラメータとして、

  • 即時伸長(Ue:吸引開始後0.1秒)
  • 遅延伸長(Uv)
  • 即時収縮(Ur:吸引解除後0.1秒)
  • 総伸長(Uf)
  • Ur/Uf:弾力性の指標。最大伸長に対する皮膚の瞬間的な戻り率。高いほど弾力性が高い。
  • Uv/Ue:粘性の指標。高いほど、粘性が高い。

などが用いられます(図2)。

また、皮膚にねじれ(回転運動)を加えて、その後の皮膚の時間変化を測定する方法もあります(図3)。


■皮膚の弾力に関する男女差に関して

Firoozら(2012)は、皮膚の弾力性は女性の方が高いと報告していますが、その差は統計的に有意ではありませんでした(男性:0.27、女性:0.273)。さらに、石川(1995)やEzure(2011)は、皮膚の弾力性に関して、男女差で有意な差は認めなかったと報告しています。さらに、Baileyら(2012)の報告によれば、腹部の皮膚でのみ、弾性変形と皮膚の硬さに有意差を認めたが、そのほかの部位で有意な差は認めなかったと報告しています。

Luebberdingらは2014に、年齢、日照時間、喫煙習慣を考慮した300人の健康な男性と女性の被験者(年齢範囲:20-74歳)を対象とした研究を行いました。キュートメータを用いて、頬、首、前腕掌側、手背を対象部位としました。その結果、皮膚の機械的性質は生涯を通じて男性と女性で異なって変化し、特に、女性の皮膚は伸張性が低いが、男性の皮膚と比較して伸張後に回復する能力が高いと結論付けています(弾性力が高い)。

Xinら(2010)は、中国人806名を対象とした臨床研究で、老化に伴い、手、額、および目周りのすべての方向で皮膚共鳴走行時間(CRRT:cutaneous resonance running time)が減少したことを示しています(すなわち、皮膚が硬くなった)。 CRRTとは、主に皮膚を評価するための非侵襲的なアプローチであり、主に真皮の乳頭層のコラーゲン繊維によって影響を受け、皮膚の硬さと負の相関があります(Ruvolo et al。、2007; Vexler et al 1999)。 男性は加齢に伴い、額と目周りのCRRTが大幅に減少しました。 11歳から20歳の男性では、3つの部位(手、額、目周り)のすべてで、CRRTが女性よりも長かったと報告されています。また、 21〜40歳の女性の手のCRRTは、男性よりも長く、0から10歳と80歳以上では男女差は認めませんでした。


■日本人男性約50名を対象として臨床試験

大西らは日本人男性の、前額部、鼻部、目尻部、頬上部、頬下部、顎部の6箇所で、キュートメータを用いて測定しました(2007)。

※大西一禎らJ. Soc. Cosmet. Chem. Jpn41(2),2007から引用

その結果、総伸長値(Uf)に関して、前額部では冬季に、頬上下部では夏季に統計的に有意に上昇していました。一方で皮膚の弾力性(Ur/Uf)は頬上下部で夏季に低下していました。これは、皮膚弾力性の分母であるUfが夏季に上昇し、分子であるUrは季節間で有意な変化を認めなかったためであった。すなわち、男性の季節的特徴として、皮膚の伸びやすさは、Tゾーン(前額部)は夏に高く、逆にUゾーン(頬部)の弾力性は夏季に低い傾向を認めています。

※大西一禎らJ. Soc. Cosmet. Chem. Jpn41(2),2007から引用


■皮膚のコラーゲン量や密度の男女差

加齢に伴うコラーゲンの減少と皮膚の厚さに関する真面目な話」をご参照下さい。

■まとめ

  • 皮膚の弾力の測定方法には色々とあり、キュートメーター測定は頻用される測定法の一つである。
  • キュートメーター測定により、皮膚の弾性や粘性が測定可能である。
  • 多くの報告が、皮膚の弾力に関して男女差はないと報告している。
  • 男性の場合、顔の部位や季節によって、肌弾力の傾向が異なる。

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