新型コロナのウソとホントシリーズ⑧
〜新型コロナに感染すると、若年者は軽症、高齢者は重症化という珍しい特徴がある?!〜

「新型コロナに感染すると、若年者は軽症、高齢者は重症化という珍しい特徴がある」

これはウソです。少しでも感染症の臨床に携わった医師なら分かりますが、多くのウイルス性感染症において、子供が罹ると軽い症状で済みますが、大人になってから始めてそのウイルスに罹ると入院するほど重症化することはよくあります。たとえば、「それはハシカのようなものだ」という言い回しがあります。”誰しもがいつかは罹らないといけない通過儀礼のようなもので、それほど大した病気ではない”、という意味が込められていますから、ハシカは決して命に関わるようなものという認識ではないと思います。ハシカとは麻疹(Measles)の別名です。ハシカも重症化すると肺炎や脳炎を引き起こして命に関わることがありますが、死亡率は1000人に1人ぐらいで0.1%です。これはCOVID-19の4〜5%と比べると一桁違います。

しかし、もしも成人してから生まれて始めてハシカに罹ると非常に重症化し、入院加療が必要になることがよくあります。これは、おたふく風邪やりんご病でも同じです。つまり、COVID-19に子供や若年者が罹ると軽症で済むことが多いが、65歳以上の高齢者が罹ると重症化する確率が高くなるのは、他のウイルス性の感染症と同じ傾向で、何もSARS2に特有なものではありません。大きな違いは、COVID-19は致死的な経過をたどる確率が高いということです。例えば毎年流行するインフルエンザでも、高齢者が罹ると肺炎を併発して亡くなることがあります。しかし、致死率は0.3%前後です。

また、COVID-19は基礎疾患がある人が重症化しやすく、高血圧、糖尿病、腎臓病、肺疾患、心疾患などの既往のある人や免疫不全状態にある人はハイリスク群と言われています。しかし、これはインフルエンザでも同じです。つまり、コロナに罹患することで生ずる死亡リスクは、他のウイルス性感染症と類似しています。また、SARS2は感染した初期が一番感染力が強いのですが、これもハシカと同じです。ハシカは、カタル期、発疹期、回復期の三つに分かれますが、最初のカタル期が最も感染力が強いと言われています。

つまり、COVID-19が呈している臨床的な特徴の多くは、他のウイルス性感染症と同様のため、取り立てて問題視するほどのものではありません。むしろ、ウイルス性感染症に対処する一般的な観点から見てゆけばよいことが分かります。また、COVID-19は重症化すると、呼吸機能が低下して人工呼吸器やECMO(エクモ)が必要になり、間質性肺炎などで亡くなることがよくあります。しかし、日本人の代表的な死因は、第1位が悪性新生物、第2位が循環器系の疾患(心疾患や脳血管疾患)、第3位が呼吸器系の疾患です。つまり、もともと高齢者は肺炎などの呼吸器系の疾患で亡くなることが多く、その病原体の一つがたまたまSARS2だったとも言えます。

確かに、SARS2には他のウイルスには見られない特殊性も多々ありますが、他のウイルスと同様の類似点も沢山あります。そのため、いたずらに恐れず、まず一般的なウイルス性感染症に準じた理解と対処をすることが重要と言えます。

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