男性の美容を真面目に考える⑥
〜皮膚の色調に関する男女の違い〜

皮膚の評価には、色、形、質感などの詳細な情報が必要です。その中でも、特に重要なのが「色」です。また、正しく「色」を評価するには、適切な照明が必要です。ですので、皮膚の専門医の間では、均等な間接光線を使用する為に、北向きの窓を要する診察室が昔から好まれています。今回は、肌の“色調”に関する男女差がテーマです。

■皮膚の色調を構成する要素

皮膚の色に関係する2つの主要な色素は、表皮のメラニンと、真皮浅層の血液(ヘモグロビン)です。皮膚の色は、この2つの成分で吸収された残りの光が、白い真皮で散乱(乱反射)されて、肌色に見えています(図1)。ですので、皮膚の表皮メラニンの量が増えれば褐色調が強くなり、血管が拡張して血流が増えると赤色調になります。逆に、貧血や低血圧の際に皮膚が青白く見えるのはその為です。また、角質の肥厚や乾燥により、角質での乱反射率が増すと、肌の不透明感が強くなります。

メラニンやヘモグロビン以外にも、血漿中のビリルビンやカロチンなどの吸光色素も皮膚の色調に影響を与えています。例えば、肝機能障害により血中のビリルビン量が増えると、皮膚や眼に沈着して、“黄疸”と呼ばれる黄色い色調になります。また健康な人でも、人参やみかんを食べ過ぎると、その中に含まれるカロチン(黄色色素)が血中に多くなり、全身の皮膚が黄色くなることがあります(カロチン血症)。

性別,年齢,部位にもよりますが、皮下組織を除いた皮膚の厚さは約1.5~4mmです。表皮の最上層である角層の厚さは平均で約0.02mmであり、食品用ラップ程度の非常に薄い膜です。また、メラニンを形成するメラノサイトは、表皮の最下層である基底層(真皮との境界)に存在します。表皮にある細胞の約5〜8%がメラノサイトと言われており、皮膚1mmあたり、1000~2000個のメラノサイトが存在し、約10個の基底細胞に対して1個の割合で存在しています(ただし、部位によって異なります)。

<肌の色調に影響を与える主な要素>
・メラニン(量、位置)
・真皮浅層の血液(ヘモグロビン)
・角質の厚さ
・角質の保湿
・ビリルビンやカロチンなどの吸光色素 

■スキンタイプとは

皮膚のタイプ(スキンタイプ)はフィッツパトリック(Fitzpatrick)分類を用いて、6つ分けられるのが一般的です。この分類方法は、本来、紫外線を浴びた時の皮膚の反応を6つに分類したものなので、フォトスキンタイプとも呼ばれます。どこかで、誰かが間違えて皮膚の色にそれを用いるようになってきて、現在では世界中のレーザー学会や論文でも、 皮膚の色をこの分類で表すことが多くなっています(図2)。

IからVIにかけて色素が濃くなっていき、スキンタイプIは白人で、スキンタイプVIは黒人です。黄色人種である日本人は、IIIとIVのタイプが多いです。日焼けした時に、小麦色になる人はIVで、赤くなって皮がむけて終わってしまう人はIIIです。一般的に、白い皮膚(スキンタイプIやⅡ)ほどメラニンによる紫外線のバリア機能が乏しい為、紫外線の影響を受けやすく、皮膚癌になりやすいです。

■皮膚の色調に関する男女の比較

現在、世界のさまざまなジャンルの多くのアーティストが、男性よりも女性の肌の方が明るく見えます。これらは、男女間の生物学的特徴が原因と考えられています。分光光度法を用いた臨床研究では、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカ地域において、女性の皮膚の反射率が男性の皮膚の2〜3%高いことが示されています(前述した通り、反射率が高いほど、皮膚が明るい(色白い)ことを意味します)。また、アジア人を対象としたLiらの研究(2014)では、メラニンや赤み(紅斑)を男女で比較し、女性の皮膚は、露出部における赤み(紅斑)が少なかったと報告しています。すなわち、男性の方が、真皮浅層の血流(ヘモグロビン)の量が多いことが示唆されています。加えて、冬の間の女性の肌は、露出した身体の部位はより明るく、手はより黄色くなったと報告しています。

2012年のアジア人を対象としたFiroozらの報告では、皮膚メラニン指数は男性の方が約1.2倍で有意に高かった(男性:214.82、女性:176.82)と報告しました。

また、2001年にRohらは、冬の間の497人の韓国人被験者(0〜87歳)、夏の間の311人の被験者(0〜84歳)を対象として、色素沈着における男女差を研究しました。この研究の参加者の肌タイプはⅣまたはⅤであり、測定は反射型の分光法を用いて、5つの身体部位(臀部、グラベラ、眉間、Vネック、内腕、前腕背側)で行いました。結果として、臀部では、0〜10歳の群が全年齢層の中で最も色素沈着が強く出ました。さらに、臀部の色素沈着は男女差が最も大きかったですが、これはズボンによる摩擦が一つの原因と考えます。また、10歳以降では、冬の間、全ての部位において男性の方が女性よりも色素沈着が強かったと報告しています。一方で夏は、冬ほど男女差は大きくありませんでした。

■まとめ

  • 皮膚の色調を決める要素は、①メラニン、②血液、③角質、④その他の吸光色素、である。
  • 日本人のスキンタイプはⅢやⅣが多い。
  • 10歳以降では、女性に比べ、男性の方が皮膚の色素沈着は強い傾向にあった(特に冬場)。その原因は、生活習慣や、肌のメラニン量、真皮の血流量、角質の厚さや保湿と考えられる。

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