新型コロナのウソとホントシリーズ④
〜社会生活がもう二度と昔に戻る事はない?!〜

「社会生活がもう二度と昔に戻る事はない」

これはウソというか、過去の歴史からウソと推測できます。人類はその永い歴史の中で、既に何度も新型コロナウイルスのようなパンデミックに見舞われてきました。有史以来だけでもマラリア、ペスト(黒死病)、天然痘、梅毒、スペイン風邪など、人類は幾度となく感染爆発に曝され、どの戦争よりもどの災害よりも多くの人間の命が奪われてきました。記憶に新しいところでは、スペイン風邪は全世界で何千万とも何億ともいわれる人間の命を奪いました。もちろん日本にも上陸しました。しかし、数年で地上から消滅してゆきました。ではどうしてそうなったのでしょうか。

コロナウイルスの感染拡大は、今回で3回目です。人間の病原体となるコロナウイルスは7種類あります。そのうち4種類はもともと人間界に生息していて、感冒つまりカゼの原因となります。残りの3種類はもともと動物界にいたものですが、何かのきっかけで人間界に入り込んできました。それが、2002年に発生したSARS-CoV(いわゆるサーズ)と、2012年に現れたMERS-CoV(マーズ)と、昨年末に中国武漢に現れたSARSp-CoV-2(いわゆる新型コロナ)です。これらを順にSARS1、MERS、SARS2と呼ぶことにします。

SARS1とMERSは、SARS2よりも毒性の強いものでしたが、SARS1は出現してほどなくして自然に消滅してゆきましたし、MERSはごく限られた地域に僅かに残っているのみです。しかし、SARS2は出現してから徐々に勢いを増してパンデミックに至りました。こうした違いを見るため、ウイルスを伝播力の強い弱いと、毒性の強い弱いで4種類に分けてみます。次の図を見て下さい(図1)。

図1

横軸は伝播力つまり感染力の強さで、縦軸は毒性の強さです。SARSとMERSは比較的伝播力の弱い部類に入っていたため、世界的なパンデミックには至りませんでした。しかし、SARS2は伝播力が強かったため、パンデミックを引き起こしました。SARS2自体はRNAウイルスと言われるもので、ウイルスの本体は15,000個程度の核酸という分子がつながったものです。そして、2週間毎に突然変異によってその塩基配列のどこかが変化しています。そのため、感染力の強いものや弱いもの、伝播力の強いものや弱いものが次々と生まれています。次の図を見て下さい(図2)。

図2 https://www.gisaid.org/epiflu-applications/hcov-19-genomic-epidemiology/

これは中国の武漢で発生したSARS2がどの様に変化していったかを示した系統発生図です。目まぐるしく変化している様子が伺えます。その結果、様々な性質のSARS2が常に生まれていることが推測できます。

ところで、人間にとってSARS2は恐怖の対象ですが、もしもSARS2に意識があれば彼らは常に自らが生き延びることに対して人間以上に恐れを抱いているかもしれません。こう言うと意外かも知れませんが、実はかれらウイルスは人間以上に厳しい生存競争に曝されています。彼らはちょうど、家を持たない流れ者のような存在です。彼らの住処となるのは主として人間の細胞ですが、一人の人間の中で生存できるのはせいぜい数週間です。それを過ぎると、ホストである人間とともに死滅してゆくか、ホストの免疫系や投与された薬剤に殺されるか、それとも新たなホストに移り住んでゆくかの何れかを選択するしかありません。その結果、彼らは常に自然淘汰に曝されています。そして、生存に有利な形に変異したものが生き延びてゆきます。

ここで図1に戻ると、SARS1やMERSは比較的伝播力の弱いものであったため、感染防御策を人間に施されると、あらたなホストに移り住むことができなくなり、自然と死滅していったと考えられます。実際、SARS1は自然に終息しましたが、MERSは限られた地域で細々と生き残っている程度です。これに対し、SARS2は感染力が強いため、少々の感染策を人間に講じられてもそれを突破して人から人に移り住んでいったと考えられます。特に、症状が出る前に別の人間への伝播力を獲得してしまうため、感染した人が知らぬ間に他人に移してしまう点が感染対策を困難にしています。しかし、SARS2の中には突然変異の結果伝播力の弱いものが出てくる可能性もありますが、そうした種は自然と淘汰されてゆきます。

このように伝播力が強いSARS2ですが、その中には毒性が強いものと弱いものがあるはずです。伝播力も毒性も強いものは、高い確率でホストとともに集中治療室に隔離され、他者にそれ以上伝播できなくなるか、ホストとともに死んでゆくと推測できます。つまり、そうしたウイルスは遠からず淘汰されてゆくと考えられます。それに対し、伝播力は強いが毒性が弱いものは、ホストに気づかれないか、ホストに軽い症状を起こすだけで隔離もされず、人から人に移り住んでゆくと考えられます。そのため、伝播力が強く毒性が弱い種は最も生存に有利と言え、それはまさに「ただの風邪」といえます。 つまり、図1にある4種類のウイルスのうち、自然淘汰に最も有利な種は、伝播力が強く毒性の弱いものであるため、最後はそのタイプのウイルスが生存競争に勝ち残ってゆき、最後はただの風邪になっていくと考えられます。

すなわち、コロナ騒動は自然と終息に向かうと言えます。言い換えれば、人間に感冒(カゼ)を引き起こすウイルスも、最初に人間界に現れた時は、SARS2のような恐ろしい病原体だった可能性があります。しかし、自然淘汰の結果、ただの風邪のような種だけが今日まで生き残っているのかも知れません。

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